>>> 海を抱く BAD KIDS ★★★★★
サーフィンに情熱をかける山本光秀は、「軽くて、悩み一つないお気楽な男」という風評のある高校生。一方、藤沢恵理は真面目で成績優秀な副生徒会長。ほとんど接点を持たないように見える二人は、ある出来事をきっかけに身体を重ねるようになる――。
『BAD KIDS』のアナザーストーリー。やっと再読が叶いました。『BAD KIDS』でもちらりと登場した、隆之の友人・光秀と、都の友人・恵理の物語です。村山作品の中でも、特に好きなもののひとつ。
父親に対する反発、生と死のはざまの葛藤、女性の性欲、友情。『BAD KIDS』よりも更に濃密なテーマが扱われています。生と性の描写がとにかくリアル。
光秀と恵理の関係は身体の繋がりを基盤として発展していくので、性的な描写もそれなりに多い。にも関わらず、いやらしさを感じさせないのはさすが。恋ではないかもしれない、愛でもないかもしれない。そこにあるのは、真っ直ぐにぶつかり合う裸の魂。
光秀の、余命わずかな父のエピソードでは、生と死の意味が問われる。「生きている」とはなにか。延命措置とは、尊厳死とは、なにか。客観的にぼんやりと考えたことはあっても、いざ、自分に選択権が委ねられたとしたら、どうするのか。父を前にして思い悩む光秀の姿は、本当に生々しい。
普段、自分が目を背けている事柄を、目の前に突きつけられたような気がします。でも、いやな気分ではなかった。それはまるで、「考えること」を、優しく教えられたときみたい。
終盤間近の恵理と都のやり取りと、光秀と恵理の会話が好きです。都関連のエピソードは、『BAD KIDS』を読んだ上で読むとより味わい深くなると思います。音楽室で恵理に対して「ごめんね」と言った都。彼女のことばに託された想いを知ったのは、『BAD KIDS』を読んでから今作を再読したときでした。
感激したのは、一度目はさっぱりわからなかった都の弾いているピアノ曲の正体を知ったとき。『海を抱く』→『BAD KIDS』→『海を抱く』という読みかたも面白いのではないでしょうか?